はじめに
発酵食品を作るとき、「発酵器具をいかにきれいに保つか」という問題は避けて通れません。
きれいに保つことができれば雑菌の繁殖が抑制され、結果的に発酵の成功率を高められます。
発酵器具をきれいにする方法は、「滅菌」「消毒」「洗浄」の3段階に分けられます。
雑菌の混入をどこまで許容するかで分けることができ、手軽さと清浄性のバランスが取れているのは「消毒」です。
- 滅菌:ほぼ完全な無菌状態にする(例:圧力鍋、火炎滅菌)
- 消毒:多くの雑菌を除去するが、一部残存の可能性あり(例:煮沸、アルコール)
- 洗浄:目に見える汚れのみ取り除く(例:水洗い、布巾拭き)
上記の分類に則り、今回は自家製発酵食品を作る際の滅菌・消毒・洗浄用品をまとめました。
※タイトルを便宜上「発酵器具の”消毒”用品」としていますが、滅菌・消毒・洗浄のすべてを取り上げています
なお、雑菌の汚染を含めた発酵にまつわるリスク全般については以下をご参照ください。

Ⅰ. 「滅菌」に使う道具
「滅菌」は、家庭で発酵食品を作る際にはいささか大袈裟な手段というのが正直なところです。
気になる方は試してみてもいいかもしれません。
なお、消毒の章で紹介する塩素消毒や煮沸消毒は、滅菌の代替手段となります。
滅菌が難しい方はそちらをご覧ください。
① 圧力鍋:高温・高圧滅菌
圧力鍋による高圧・高温環境に器具をしばらく置くことで、高レベルな殺菌処理を行えます。
哺乳瓶などの乳幼児の器具にも使われる手法です。

- 通常の煮沸消毒よりも高温殺菌が可能で、熱に耐性のある菌(ボツリヌス菌)などにも有効。
- 圧力鍋さえあれば、比較的簡単に実施可能。
- 耐熱性のある器具にしかこの方法は使えない。
- 滅菌処理後に器具が冷めるのを待つ時間が生じる。
※急激に温度を下げると器具が破損する恐れあり - 一人暮らしや料理をあまりしない場合、圧力鍋を持っていないことの方が多い。
※私も圧力鍋は持っていません。このためだけに購入する必要はないと思います
② ガスコンロ・バーナー:火炎滅菌
もしガスコンロがあれば、器具を直接火に当てて滅菌する選択肢もあります。
バーナーなどの発火器具でも代用できます。
選択肢として挙げはしましたが、野性味あふれる方法のためおすすめはしません。
もし実行する場合は、器具にまんべんなく炎が行き渡るようにしてください。
- ガスコンロさえあれば、特別な器具は不要。
- コンロの説明書を読み、禁止行為に該当する場合はこの方法での滅菌をしない。
- 安全のため、金属製スプーンなどの小さくて耐火性のある器具のみを対象とする。
Ⅱ. 「消毒」に使う道具
家庭での調理においては、消毒が最も一般的な手段です。
ひと口に消毒と言っても、程度によって「強力な消毒」と「通常の消毒」に分けられます。
- 強力な消毒用の道具:キッチンハイター、熱湯
- 通常の消毒用の道具:アルコールスプレー、次亜塩素酸水スプレー
① キッチンハイター:アルカリ性塩素消毒
消毒の方法として、最も強力なのがキッチンハイターです。
家庭内で実施できる選択肢の中では、滅菌に最も近いと言えます。
万全を期したいときや、容器を別の発酵食品に使いまわすときなどに適しています。

- ハイターを少量加えた水に漬けおくだけで、ほぼ完全に除菌可能。
- プラスチックなど、高温に弱い(=煮沸消毒できない)器具にも使用可能。
- 商品に付記されている使用上の注意をよく読む!
ハイターは人体に有害で、原液が目に入ると最悪失明する可能性あり。 - 漬け置き後、水でよく洗い流す。少しでもハイターが残っていると発酵が失敗する。
② 熱湯:煮沸消毒
キッチンハイターの代替手段として挙げられるのは熱湯による煮沸消毒です。
熱湯の中に器具を入れ、火をかけながら10~15分間ほど煮続けるのが基本です。
殺菌力は落ちますが、器具に熱湯をかける、容器なら中に注いで10分ほど置く、なども有効です。
- 特別な道具を使わずに高レベルの消毒が可能。
- 化学物質(塩素・アルコールなど)による汚染の可能性もゼロ。
- 耐熱性のある器具にしかこの方法は使えない。
- 熱くなった器具や蒸気でやけどをしないように注意。
- 煮沸消毒後に器具が冷めるのを待つ時間が生じる。
※冷水などをかけて急激に温度を下げると、器具が破損する恐れあり
③ アルコールスプレー:アルコール消毒
アルコール消毒は、手軽さと殺菌性能のバランスが最もとれている方法です。
おすすめのアルコールスプレーは、飲食店御用達の「ドーバーパストリーゼ77」です。
自然由来のアルコールとカテキンが使われており、安全性・殺菌性能ともに高いです。
500mlのボトルがよく売られていますが、東急ハンズなどで1000mlの詰め替えボトルが買えたりする(500mlと比べてお得!)ので、探してみてください。おそらくネットでも買えます。
- 器具に噴霧するだけで消毒でき、吹きかけた後も自然に揮発するので手間が少ない。
- 食品用を使えば、少しくらいアルコールが残存していても安全性に影響なし。
- 引火性のため、火気のそばに置かないように注意。
- アルコール不耐症の方は利用不可。
④ 次亜塩素酸水スプレー:酸性塩素消毒
次亜塩素酸水も便利な消毒用品です。
ノロウイルスの感染予防に使われるほか、コロナ禍でも一躍有名になりました。
なお、殺菌性能だけ見ればアルコールよりも優秀ですが、コストや使い勝手の面では劣ります。

- アルコールでは殺菌できないノロウイルスなどにも有効。
- アルコール不耐症の方でも利用可能。
- 多くの場合アルコールスプレーよりも噴霧範囲が狭く、1回の使用量が多くなる。
結果、消費スピードがアルコールよりも早い。 - 揮発性ではないため、噴霧後すぐに使いたい場合は水洗いする必要がある。
- アルコールよりも使用期限が短い。
「キッチンハイター(次亜塩素酸ナトリウム)」と「次亜塩素酸水」は別物です。
前者は人体に有害、後者は一般にスプレーとして流通しているものであれば人体に無害です。
キッチンハイターを薄めても次亜塩素酸水はできないので注意してください。
以下のサイトに両者の違いがまとまっていたので、気になる方はご覧ください。
キッチンハイターを薄めても【次亜塩素酸水】にはなりません!
Ⅲ. 「洗浄」に使う道具
洗浄に特別な道具は必要ありません。
発酵食品を作る際、どれだけ面倒でも洗浄だけは最低限やっておきたいところです。
野生酵母などの発酵が安定しない食品を作る際は、滅菌か消毒をした方が確実です。
① 水道水
シンプルかつ最もポピュラーな手段です。
器具をまんべんなく水で洗い、汚れを落としましょう。
当たり前ではありますが、食器用洗剤などを使うとより洗浄効果が増します。
洗剤は、除菌効果があるものだとなお良いです。

② 布巾・キッチンペーパー
きれいな布巾や使い捨てキッチンペーパーを使って洗浄(水拭きなど)する方法もあります。
基本的には水で洗う方が楽で確実ですが、容器に居着いた発酵菌を水洗いで逃したくない場合は拭きの方が良いです。
同じ容器で同じ発酵食品を作り続けたい、などの場合ですね。
おわりに
最初のうちは、殺菌を徹底して少しでも成功確率を上げた方が挫折しにくいです。
成功率を上げれば、その分発酵食品を作る楽しさを感じやすいからです。
- 始めたての頃は、無理のない範囲で滅菌か塩素・煮沸消毒して発酵食品を作る
- 勝手がわかってきたら、徐々にアルコール消毒や洗浄に切り替えて様子を見る
というやり方が続けやすいと思います。
作る発酵食品の材料に応じて殺菌方法を変えるのもポイントです。
微生物の働きが弱い天然酵母は器具を滅菌する、スターターを使う場合は消毒で済ますなど。
色々試してみて、自分の環境や性格に合った方法を見つけましょう。
よろしければレシピの一覧もご覧いただき、気になった発酵食品にチャレンジしてみてください。


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