はじめに
① 都市型発酵とは
都市型発酵とは、「都市の居住空間にあわせた、少量・小スペースの発酵」を意味する造語です。
このサイトのメインテーマであり、サブタイトルにも掲げています。
② 都市型発酵を掲げる理由
あえて都市型発酵という新しい言葉を作った理由は、
「限られたスペース・設備」で、
「発酵という現象を最大限楽しむ」ための、
「独自のアプローチを定義」したい
と思ったからです。
都市部の住環境は、(お金持ちでない限り)アパートが一般的という印象です。
キッチンはだいたい必要最低限の設備のみで、余剰スペースもそんなにありません。
20~30代の独身会社員に絞ると、この傾向はなおさら顕著だと思います。たぶん。

合理性と地価により、部屋は狭い
私も、まさにそんな都市部のアパートに住んでいます。
そして、発酵が趣味になってから、その環境に窮屈さや不便さを感じるようになりました。
とはいえ、ほかの面では都市暮らしはそれなりに便利だし、引っ越しも考えづらい。
そんな状況を踏まえ、“都市型発酵”というキーワードの下、
少量・小スペースの環境下における発酵食品づくりの様子や、それに連なる工夫などを記録したら、
ほかの方の役にも立つのでは?と思った次第です。
③ 都市型発酵のすすめ(本ページのメイントピック)
このページでは、そんな都市型発酵にチャレンジする際の基本的なポイントをまとめました。
もちろん、都市部に限らず、少量・小スペースで発酵にチャレンジしたい方ならどなたでも参考にしていただける内容かと思います。
あくまで個人的な経験に基づく内容ですが、参考になれば幸いです。
なお、そもそもなぜそこまでして発酵食品を作りたいのか、
そしてなぜ皆さんにも試してほしいと思っているのかについては、
サイト概要のページで思いを書いています。よろしければそちらもご覧ください。

Ⅰ. 「場所」のポイント
① 生活エリアごとの特徴を理解する
発酵食品にとって、気温や湿度、直射日光の有無などは成否を決める重要な要素です。
微生物にとっての理想の環境を把握し、それを満たす場所で発酵させるためには、
生活エリアごとの特徴を知っておくことが大事です。
| 場所の例 | 特徴・注意点 | 発酵食品(例) |
|---|---|---|
| エアコンのある部屋 (居住スペース) | 👌🏻20~25℃くらいの気温を通年で維持可能 ⚠️エアコン風の滞留に注意。サーキュレータを使うと効率よく循環可能 | ケフィア、発酵飲料 |
| キッチン下、クローゼット | 👌🏻冷暗所(15~20℃)のため、長期熟成向け ⚠️湿気がこもりやすい。適宜除湿剤を使うと〇 | 味噌、塩漬け、ぬか漬け |
| ガスコンロ横、ルーター横 | 👌🏻ガス火や排熱により、比較的高温を維持 ⚠️温度の過上昇や不注意による容器破損に注意 | パン生地、酵母液の起こし |
住む場所によって環境は大きく異なるため、上記はあくまで参考です。
実際に試しながら、自分だけの発酵スポットを探してみてください。
② 縦方向に収納する
狭い居住空間での発酵において、もっとも悩ましいのはスペースの確保です。
容器や器具が増えるにつれ、適切な置き場を考えなくてはいけない場面が増えてきます。
そんな時は、机の上やラックなどに置くようにすると、縦に収納ができて便利です。
圧迫感を抑えてスペースを確保できるほか、ホコリが入りにくいというメリットもあります。
ちなみに、私はスタンディングデスク上に発酵中の容器を置いています。
かつてはリモートワークで使っていたのですが、出社回帰に伴って転用しました。

注意点として、地震の際に容器が落ちて破損する可能性があります。
すべり止めなどで対策するか、リスクを受け容れて運用しましょう。私は後者です。
Ⅱ. 「道具」のポイント
① かんたんな道具で始める
まずは最低限の道具で始められる発酵食品を作ってみましょう。
興味が続くかもわからない段階でむやみに便利道具を増やすのはおすすめしません。
お金もかかるし、かさばります。ここまでそろえたからには…といった変なプレッシャーも生じます。

発酵はそういうタイプの趣味ではない
かんたんな発酵食品で発酵自体に興味を持てるかどうかを確かめてから、徐々に手を広げていくのがいいかと思います。
小ビンとショウガ・水・砂糖のみで作れるジンジャーバグは、初めての自家製発酵に最適です。(なじみはないかもしれませんが)
レシピは以下のリンク先をご覧ください。

② 身の回りの物を活用する
発酵を続けてみようと思い始めた際も、むやみに色々な道具をそろえる必要はありません。
意外と身の回りの物で代用できる場合が多いからです。
- 古くなった衣服・タオル ⇒ 保温や汚れ拭き
- 空きビン ⇒ 発酵容器
- スタンディングデスク ⇒ 置き台…
といったように、工夫する過程も楽しんでみましょう。

ほかにも要らないニット帽を保温に使ったりしている
③ 苦手な作業は便利道具で解決する
工夫の過程を楽しむ一方で、それに気をとられて準備に時間がかかりすぎると長続きしません。
苦手な作業や手間がかかる作業は、専用の便利道具を用意して解決するのがストレスフリーです。
何に時間をかけたくて、何にかけたくないかは人それぞれです。
これなら長く続けられそうだな、と思える最適な向き合い方を見つけるようにしましょう。
参考までですが、私がパン作りをはじめたときの取捨選択の結果は以下の記事をご覧ください。

Ⅲ. 「発酵サイクル」のポイント
発酵サイクルは、発酵食品を仕込む ⇒ 世話をする ⇒ 消費する ⇒ 次の発酵食品を仕込む… といった一連のサイクルを指します。
① 一度に何品も仕込まない
作るのに慣れてくると、あれやこれやと色々な発酵食品を作りたくなってきます。
ただ、勢いに任せて同時にいくつも作るのは避けましょう。
管理が煩雑になったり、スペースが圧迫されたり、食べきれなくなったりするからです。

常に発酵食品の存在に行動を支配されるというのは、精神衛生上よくありません。
自分の時間的・空間的・胃袋的余裕と相談しながら、健全なサイクルを回せる程度に作る数・量を抑えることが長続きの秘訣です。
② 調味料をサイクルに組み込む
①とも関連しますが、発酵食品を作ったからには、それを食べる必要があります。
そのままでしか食べられないものや、短期間で食べきる必要があるものばかり作ると、消費量より作る量のほうが多くなる状況に陥りがちです。
単身者など、自分しか食べる人がいない場合は特にです。
これを避けるため、味噌や塩麹など、日持ちして汎用性の高い調味料を時折作りましょう。
加工可能で、かつ短期で大量に消費する必要がないため、発酵サイクルが停滞しにくくなります。
ただし、放置しすぎると味が個性的になるか、最悪の場合腐敗するので注意してください。

中華料理全般に使える
③ 記録をのこして次に活かす
発酵は微生物を扱うため、どうしても失敗してしまうことがあります。
一方で、失敗だと諦めかけていたのに、どういうわけか巻き返して成功することもあります。
失敗したならば次は成功できるように、また成功したならば再現できるように、
発酵食品の作成過程を記録に残すことをお勧めします。

面倒かもしれませんが、きちんと事前に調べる、そして記録を踏まえて次にやるべきことを考える、
という習慣があった方が、成功率は確実に高まります。
日ごとに写真だけでも撮るようにするなど、負担になり過ぎない範囲で試してみてください。
おわりに
ここまでお読みいただきありがとうございます。
ここに書いたのはあくまで現時点の気づきであり、これからも試行錯誤しながら記録を付けていこうと思います。
都市部の環境は、微生物にとって「理想的」ではありません。
都市型発酵を続ける中で、あらためて実感しています。
いわゆる地方部・農村部には、空間的なバッファ(余裕)があることが多いです。
これにより、大きな発酵容器を設置でき、かつ安定した常温を保つことが比較的簡単です。
一方で、都市部、特に東京の集合住宅にそのようなバッファはありません。
そのため、環境が少し変わっただけで発酵に大きな影響を及ぼします。
加えて、万が一発酵が失敗(腐敗、爆発…etc.)した際の影響も大きくなりがちです。
上記を踏まえ、私はむしろ都市部での発酵こそ、細やかな管理が必要になると考えています。
私が自家製発酵にまつわるリスクを色々とまとめたのも、そういった考えを持っているからです。

ポイントやリスクなどを踏まえながら、皆さまが楽しく発酵食品づくりをできるよう祈っています。
実際のレシピや観察記録は、下記もご参照ください。



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