読書

【読書#04】『働くことがイヤな人のための本』書評

はじめに

今回は、タイトルに惹かれてジャケ買い(カバー買い?)した本を取り扱いたいと思います。
本屋で偶然見かけ、労働嫌いとしては買うしかない題名だったので思わず…といった感じです。

中島 義道 著 『働くことがイヤな人のための本』
(新潮文庫、2004年、ISBN:978-4101467238)

『働くことがイヤな人のための本』 中島義道 | 新潮社
「仕事とは何だろうか?」「人はなぜ働かねばならないのか?」「生きることがそのまま仕事であることは可能か?」――引きこもりの留年生、三十過ぎの未婚OL、中年サラリーマン、元・哲学青年の会社経営者といった人物との架空対話を通

著者はそれなりに有名な哲学者で、カント哲学などが専門のようです。
その経歴からもわかるように、本書は働かないためのライフハックを紹介するような自己啓発本ではなく、働くことを主題とした対話形式の思索を追うような作りとなっています。

感想:

★★★⯪☆ 3.5/5.0

  • タイトルから把握しづらいが、「不条理な世界でどう働くか」を問う思索的な本
  • 「働かないためのライフハック」や「明確な答え」を授ける本ではない
  • 生きづらさを抱えた人向けの内容で、人を選ぶ

① 真のテーマはこの世界の「不条理さ」

本書は、働く意味や生きる意味に悩む世代の異なる4人と、著者との対話形式で話が進んでいきます。

この本が繰り返し語りかけてくるのは、「人生や社会は不条理である」、そして「その理不尽さをそのままとらえ、意味を問い続けるべき」ということです。

理不尽な現実から目をそらさず、いかにもそれっぽく見える安易な答えに飛びつかず、
ただ目の前の不条理さを見つめ、それが何かを考え続ける営みこそ生きることであり、働くことでもある、というのが主要なメッセージと理解しました。

ダンベル
すでに重荷を抱えている人に重しが加えられ、
身軽な人は身軽なまま-それが不条理

働くことがイヤだと感じてしまうことの根本原因が人生・社会の不条理さ、
つまり各人の環境の違いなどから生じる越えがたい差異であって、
働くことを受容するためには、その不条理さや差異を正面から認識し、解釈するしかないということでしょうか。

わかるような、わからないような、といった感じです。
でも、思索というのは得てしてそういうものだとも思います。

結局のところ自分の人生なのだから、解釈の先に存在する何らかの「答え」には、自分で至るしかないのでしょう。
「答え」に至るための指針は示すが「答え」自体は示さない、というスタンスがはっきりと感じとれる本でした。ある種誠実な態度とも言えます。

② キャッチーなタイトルの功罪

本のタイトルは、著者の意向だけでなくいろいろな大人の事情が交錯したうえで決まる、
というのは聞いたことがありますが、それにしても本書のタイトルはこんなキャッチーでよいのでしょうか

もっと「人生の理不尽さについて」とか、「不条理な世界で働くあなたへ」とか、
この本の伝えたいことを込めた方が良かったのでは、と思ってしまいました。
「働くことがイヤな人のための本」だと、なんというか釣り針が大きすぎる気がします。

釣り針

とはいえ私もこのタイトルにまんまと釣られた側なので、どうこう言える立場ではありません。
あえて、このタイトルなのでしょうね。

それでも、明確な答えを求めていたり、社会の理不尽とかは一旦置いておいて目の前の仕事が嫌でたまらなかったりする人は、タイトルだけに惹かれて読むと盛大な肩透かしを喰らうでしょう。
予想と違った内容に怒りすら覚えるかもしれません。

総じて、読んだ後の感想が二分されそうな本だなーという印象でした。

おわりに

わかりやすく役に立ったり、素早く何かを得られたりする本ではないですが、
働くことに対してあれこれ考える過程を追えるのが、独自性があって興味深かったです。

特に、ぐるぐると考え込んでしまうような人、社会に対してうっすら居心地の悪さを抱えている人にはじんわりと効くような内容だったと思います。

漢方たち
じんわり効く…まるで漢方のように(?)

一方で、明確な答えを求めている人や、そもそもうだうだ考えずに行動を起こせる人は、
終始何を言っているんだこの本は、という感想を抱くと思います。

実際、巻末の解説を書いている方は、本書の内容をボロカスに批評していました。
ほぼネガキャンで逆に面白かったので、そこだけ読んでみるのもいいかもしれません。

なお、私はけっこう楽しく読めました。著者の思い描く読者の条件に当てはまっていたようです。
これからも、著者の言うとおり不条理な社会で意味を見つけるためにもがき苦しもうと思います。
…何の解決にもなっていないですね…。

よろしければご支援をお願いします

Follow 宇辺ドブレ

コメント